ケンカも学び 育ちのチャンス

~自分でコントロールする力を身につける~

大人が言葉で「仲良くしなさい」と伝えても、一見その行動をしているように見えるかもしれませんが、実は子ども達の気持ちが動いて行動しているわけではありません。

イメージ

大人の都合でコントロールされてきた子は、自分でコントロールする力が未熟なまま育ってしまいます。

友達とぶつかり合い、自分たちで考えて解決してきた経験の中で、周りとのかかわり方を考えて自分をコントロールする力が育っていきます。

子どもたちは、友だちと一緒に過ごしていく中で、物の取り合いや思いの行き違いを必ず経験します。そして、不快な思いや悲しい気持ちを味わいます。

でも、友だちとは遊びたいので、どうしたらそんな思いをしないですむか自分たちで考えながら行動していきます。


そんな育ちのチャンスを、大人が

「はいはい、ケンカはやめてね」
「ごめんなさいは?」と

思ってもいない「ごめんなさい」を子ども達に無理矢理言わせてしまうことは、せっかくの育ちのチャンスを奪ってしまうことになります。

子ども達は、友達とのかかわりの中で相手とのほどよい距離間を保ったり、けんかをしても仲直りしたりする経験を自然と学んでいるのです。

 ケンカを通して育つ姿


友だちとの気持ちのぶつかり合いや葛藤が起きた時、めぐみの保育者はすぐに声をかけたりせず、少しだけ距離を保ちながら様子を見守るようにしています。
大概は、気持ちをぶつけ合ったり折り合いをつけたりしながら、自分たちで解決しています。

しかし状況によっては保育者が

「嫌な気持ちになったんだね」
「どうしたかったの?」
「○○したかったんだね」
「△△ちゃんはどんな気持ちだったの?」

ということを尋ねながら丁寧にかかわることで、子ども達は自分の気持ちと相手の気持ちに気づき、言葉にしていきます。そして、どうしたらお互いにとって快適に過ごせるのか、何度も経験しながら少しずつ気づいていくのです。これにはたくさんの時間が必要ですが、心はじっくり育っていくものなのです。

イメージ

相手の気持ちに気づいたり、自分の思いを伝えたり、折り合いを付けて解決できたりした経験が、喜びや自信となって、いろいろなことを少しずつ乗り越えられる力になっていきます。

また、自分の感情や行動も少しずつコントロールできるようになります。そして、そんな経験を繰り返してきた青帽子たちは(年長)いろいろな場面で話し合いをするようになっていきます。

その場に一緒にいた友だちが間に入ってそれぞれに話を聞いたり、その気持ちをみんなでまとめてお互いに納得し合ったり、自分たちで解決し、また一緒に遊び始める姿をよく見かけます。
子どもたちの成長を感じることができる瞬間です。

ちいさなケガ

~自分でコントロールする力を身につける~

子どもたちは遊びの中でいろいろな経験をします。
特にこの時期の子ども達は、高い所に登ったり狭い所に隠れたりすることが大好きです。大人から見るとハラハラしてしまうようなことを喜んでやります。

冒険心のある子は、身体を動かしながらチャレンジすることが大好きで、できるようになると次はさらに難しいことにチャレンジします。その姿をみて、別な子もチャレンジしてみようとします。でも、思ったようにうまくいかず、失敗することもあります。そのため、擦り傷や打撲など、ケガをしてしまうこともあります。

しかし、そんな経験がないと、「この木なら登っても大丈夫」「この高さは危ないぞ」など自分なりの『大丈夫』と思える感覚も育ちません。
めぐみでは、子どもの「したい」気持ちを大事にしながら、いろいろと挑戦してみる姿を危険でない限り見守るようにしています。
走って転んでも、木からずり落ちてもケガはします。ちいさなケガは、チャレンジの証と受け止めてあげてほしいと思います。でも本当はやっぱり、みんなケガをせず家に帰れるといいなと思っています。

 

ケガをする権利

ドイツのバイエルン州の幼児教育カリキュラムには「子どもはケガをする権利がある」と書かれています。ドイツの幼稚園に訪れた時、5歳児がナイフを使って昼食のパンを切っていました。左手の指を切らないか心配して「大丈夫か?」とその子どもに聞くと、「うん、ぼくは前にしたからだいじょうぶ」とケガの跡を見せてくれました。失敗をしながらこんなことができるようになったんだという自信あふれる言葉でした。

(せんりひじり幼稚園コンセプトブックより)